1か月に5分ぐらいずれるという。
それを聞いて、我が家のトイレにある卓上クォーツ時計(景品で貰ったもの)も、正月に合わせた時刻が、現在10分遅れとなっているのを思い出した。
ただ、そこでふと不思議に思えて、同僚に問題提起してみた。
「安物だからと言って、水晶振動子の精度が下がるわけでもないだろうに、なんでズレるのかな?」
これに誰も答えられなかったことから、調べたり考えたりし始め、ようやく一つの回答にたどり着いたので、それをご紹介したい。
皆さんは、どんな原因を思い浮かべただろうか?
まず、クォーツ時計についておさらいしておこう。
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水晶振動子の固有周波数の精度が高いことを利用し、それを時計に応用したのがクォーツ時計だ。
それまでのぜんまいネジを利用した機械式時計より時刻精度が高い上に、大量生産が可能で値段も圧倒的に安いことから、あっと言う間に時計業界を席巻するようになり、機械式時計は趣味の商品の地位へ押しやられ、スイスの老舗時計メーカーがいくつも倒産に追い込まれたことは、ご存知の方も多いとと思う。
水晶振動子 - Wikipedia
例として、ある水晶振動子の固有周波数が32000Hz(Hzは1秒間の振動数)であれば、水晶振動子の出す電気信号を32000回カウントすれば、それが1秒ということになる。
水晶振動子の固有周波数は、気温などにより多少の変動はあるものの、極めて安定しているため、一般的なクオーツ時計の時間精度は月差±20秒のレベルと言われている。
グランドセイコーやザ・シチズンの高い時計のように、さらに工夫を加えて、年差5~10秒の精度を誇る腕時計もあるぐらいだ。
一方、いくら安物の時計とはいえ、安物の水晶振動子を使うと、固有周波数の精度が低いというようなことは、水晶振動子の原理的に考えづらく、そうした理由で時計の時刻のずれが大きくなることは考えにくい。
じゃあ、なぜ安物のクォーツ時計はズレるのだろうか?
それは、先ほど書いた「水晶振動子の固有周波数の精度からすれば、クォーツ時計の時刻精度は月差±20秒に収まる」という論理に、一つ前提が抜けているからだ。
水晶振動子の固有周波数の揺らぎは非常に小さいのだが、部品として納品される水晶振動子の固有周波数自体には、工業製品であるからには、ある程度のバラつきがある。
クオーツ時計が今ほど世間にあふれていなかった頃は、個々の製品に使われている水晶振動子の固有周波数を計測し、そのバラつきに応じて、時計側の時定数を微調整して、水晶振動子の個体差の影響を抑えていた。
だからこそ、月差±20秒に収まる精度が保てたのだ。
ところが、現代では、物凄い量のクォーツ時計が、しかも信じられないような低価格で量産されている。このような状況で、高級品でもなければ、一台一台時計側の時定数を調整することなど不可能だろう。
じゃあこうした安物時計メーカーはどうしているかというと、部品メーカーに水晶振動子を納品させるときに、「指定した固有周波数に対して、これだけの偏差(バラつき)に収まるよう納品しろ!」という条件で納品させるのだと、想像する。
そして、納品された水晶振動子を、そのまま部品として時計に組み込んで組み立てられる。
そして、低価格が最優先の製品あれば、手間のかかるチェックなどせず、そのまま出荷してしまうだろう。
結果として、水晶振動子の部品としてのバラつきが、そのままその時計の時刻精度に影響を与える結果となる。
出来上がった時計の水晶振動子の固有周波数が、たまたま製品仕様に近ければ、高価な時計と同等の精度で動くが、運悪く固有周波数のスペックからの偏差が大きい水晶振動子に当たってしまった時計は、クォーツ時計なのにやたら時刻がずれる時計が生まれる結果となるのだ。
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先日レビューしたこの腕時計も、デザインも機能も2,000円という価格からは想像できないほど造りがいいのだが、唯一気になったのが、スペック表に時刻精度の記述がなかったことだった。
こうしたスペック表に時刻精度が書かれていないクォーツ時計は、ここまで書いた理由により、時刻精度に関して、当たり外れがある可能性があることに注意したい。
クォーツ時計だからと言って、必ずしも高精度とは限らないのだ。
もう一つ、考察。
最近増えている電波時計などは、おそらく水晶振動子の固有周波数による時計側の調整はやっていないだろう。
というのも、1秒以内のずれであれば、毎日定期的に長波標準電波を受信して時刻補正してやれば、見た目に時刻がずれることはないからだ。
最近、1万円を切る安い電波時計も多いので、それらは、こうした割り切りはしている可能性は高いと思う。
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